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活動報告

上田清司知事に対する問責決議に対する反対討論

 61番、菅克己です。民主党無所属の会を代表して、上田清司知事に対する問責決議について、反対の立場から討論をいたします。先に上程された『「埼玉県知事の在任期間に関する条例」の遵守又は適正な手続きを求める決議』で討論をしておりませんので会派の考え方をしっかりと表明したいと思います。
先ず、法的な観点から討論をいたします。
私たちは、上田知事が、多選自粛条例を廃止して、再選を果たすこともあり得ようと考えました。
しかし、知事の意志として、多選自粛条例は廃止せずに、それを含めて県民の皆様に判断をしてもらうという意思表示がなされました。あえて十字架を背負って選挙に臨むという知事の判断であります。むしろ、次に控えている知事選挙において多選自粛条例があることについて説明責任を果たさなければならないことになり、埼玉県民の理解を得ることは可能ですし、問責決議案の論点である『巧妙な「すり替え」や有権者たる県民に責任転嫁する卑劣な行為』ではなく、これこそが憲法92条と地方自治法第1条にある「地方自治の本旨」すなわち「住民自治」に資するものと言えます。
被選挙権は憲法第15条1項、第44条において保障された権利であり、公職選挙法第10条1項4号等の一定の要件を充足する国民に広く認められているものであります。そこで、多選自粛条例では、努力義務として、すなわち、最終的には政治家の判断によるものとして、規定したものと理解しております。政治家、上田清司知事が、この条例を踏まえた上で、立候補を決意しているにもかかわらず、県議会6月定例会で『「埼玉県知事の在任期間に関する条例」の遵守又は適正な手続きを求める決議』だけではなく、直接的、間接的に出馬を阻止し、これを断念させるかの行為は、結局、有権者の審判を避けようとするものであって、そのような決議への賛同は、政治家としていかがなものかといぶかる次第であります。
以下、憲法上の権利を侵害し、有権者の審判を避けようとする本議案を巡る諸事情に言及しつつ、問題点を指摘したいと思います。
平成25年9月議会
○新たな森整備事業に対する執行停止決議を行い15か月事業が塩漬けにされたこと
平成26年2月定例議会
○県立小児医療センターの工事費が説明不足の理由により
否決され、結果として工期開始が遅れ、臨時議会で可決されたこと
平成26年2月議会
○教育振興基本計画の継続審議となり些細な指摘で4か月塩漬けにされたこと
平成26年6月定例議会
○大宮駅東口再開発を認める条件として、全く関係の無い地下鉄7号線の延伸と順天堂医学部付属病院の誘致を付帯決議で条件にしたこと等、

県民益には程遠い理屈や問題の本質と外れた対応で事業進捗を滞らせることが、この2年間、知事選挙をにらんで埼玉県議会で多発しているのであります。
本定例議会でも、多選自粛条例の努力義務規定を守らないとの理由から、全く関係のない介護保険法施行条例の一部を改正する条例において、介護事業者に対し「食糧その他の非常災害において必要となる物資の備蓄に努めなければならない」という努力義務規定について継続審議にしました。人の命を守る規定について、全く関係の無い理由により、棚ざらしにされました。県民益を全く無視し議案を判断することは、議会の本来の機能を逸脱するばかりか、議会の暴走であります。
いずれも県民生活に直結する重要案件を「人質」にとり、計画を停滞させる「嫌がらせ」としか言いようがありません。県民そっちのけで行われる議会運営を正常といえようはずがありません。
 また、その類の一つでありますが、苦言を呈したいことがございます。知事と業者の関係性をとらえて、業者が刑事上、民事上何ら問題点の指摘が出来ない状況の中で、議員の公式発言として、企業名を具体的に挙げてあたかも問題があったかのように指摘をすることは、名誉棄損にもあたる事案であります。
 確認をいたしますが、多選自粛条例は、
第1条に、「(略)知事の職に同一のものが長期にわたり在任することにより生ずるおそれのある弊害を防止するため、知事の在任期間について定め、もって清新で活力ある県政の確保を図ることを目的とする。」と条例の趣旨目的を定めています。
第2条は、第1条の目的を達成するための具体的手段として「(略)その職に連続して三期を超えて在任しないよう努める」ことを定めています。
この条例に関しては、第2の四選自粛だけに注目が集まっていますが、むしろこの条例で重要なのは、上田知事について、多選による「弊害」が現実に存在するかどうか、「清新で活力ある県政の確保」がされているか否かの問題であります。この条例は、「権力必腐(けんりょくひっぷ)」という観念で立案されたものと理解しております。そして、知事の職について、一般論として、四選は好ましくないとして、これを回避する努力義務を課したものでありましょう。しかし、その一般論に固執することが重要なのか、それとも、得難い人材を知事として選出することが重要なのか。上田知事も、見るべき知事候補が存在するのであれば、何らの未練もなく立候補を見送ることでありましょう。しかし、そうではないからこそ、自ら提唱した規範を前提として、立候補し、自ら四選を得るのが権力腐敗となるのか、それとも、自らの四選が県政にとって必要であるのかを有権者に問おうということと承知いたします。
結局、その時の知事によって清新で活力ある県政の確保が出来なくなるのが、3期12年なのか、それ以下なのか、或はそれ以上保てるのかは、知事の能力や、他の政治勢力次第だと思われます。今回の知事選がまさにこれも含め判断をしていただくことになります。
民主党無所属の会では、知事の活動を見ていると「清新で活力ある県政」を確保できているものと総括しています。常に知事は、さまざまな議員の提案に対して、謙虚に耳を傾け、今の県政に必要と思われる提案については、的確にそしてスピーディーに対応して来ているという評価をさせていただくものであります。
また、議員や行政内部の意見だけでなく県民や県内の各種団体等の声も丁寧に受け止めて、対処して来ていると感じています。
県民には選挙で、政策や実績、人格、識見、リーダーシップなどを総合的に判断する機会が与えられなければなりません。県民にとって、上田知事が出馬しないことの損失は計り知れません。それが故に県内の各界の代表が4選出馬の要請をされているものととらえます。
さて、この多選自粛条例を制定することによる弊害に、「レイムダック」があります。「レイムダック」とは、任期終了が間近に迫った首長や政治家が、職員等に対して影響力を失うことを示します。私が見る限り、多選自粛条例により今回最も弊害の根源になっているのは、多選自粛をめぐって大騒ぎをしている自民党県議団の対応を生み出してしまったことだと考えますし、これこそが県政を混乱させ、県政の発展にとって弊害を生み出しているものであると考えます。
さて、付言いたしますが、決議案文中に「4選出馬を禁止するものではなく、努力義務を規定した自粛条例であるなどと詭弁を弄するに至っており」とあるが、法的解釈上では詭弁ではないのであり、表記の間違いであることを厳しく指摘しておきます。
 最後に道義的観点から、討論いたします。
 本議会において、数多くの議員が一般質問において、多選自粛条例に関する執拗な質問が行われました。また、この2年間、知事選を睨らみ議案に対する執拗な質問がなされました。
 本定例本議会では、知事は多選自粛条例に関して反省と丁寧なお詫び、それを守ろうとした努力について何度も何度も語られました。
 権力者に対しては、厳しい批判がなされなければならないのは当然ではありますが、この間の聞くに堪えない野次や批判に対して、真摯に向き合っている知事の態度に対して、度を越した対処は、それこそ非人間的な仕業と言わざるを得ません。
 むしろ、このような仕業を考えた自民党県議団に対して、問責に値する言動が行われているという認識をお持ちいただき、反対討論といたします。

以上

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