
有機農業、有機農産物を使った六次産業について
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平成30年2月15日
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平成30年2月15日
【視察先】
(株)プレマ 赤城オーガニックファーム
群馬県前橋市粕川町下東田面303-4
【視察目的】
埼玉県も大農産地でもあり、後継者不足や、農業従事者の平均所得を上げていくことは喫緊の課題となっている。有機農業は手間暇のかかるものであるが、一方で生産物は差別化が図られ、安定供給している本取り組みの先進事例を視察調査することにより、埼玉県の有機農業への参考とする。
【視察内容の概要】
(株)プレマは、群馬県前橋市粕川町にあり、赤城山の南側、標高180mに位置し、有機農場としては大規模経営を展開している。ビニールハウス62棟、その他、露地作付もおこなっている。従業員は40名(経営陣3名、社員8名、技能実習生2名、パートさん)有機農業にこだわり続けた思いは、生産のみならず、加工食品にも受け継がれ、素材の品質はもとより、自然な原材料を使い、食べた人の心身が幸せで満たされる「ヒーリングフードのコンセプトに基づいた加工食品の商品開発もおこなっている。また、有機農業と有機食品の普及に取り組んでいる。
【説明要点】
1, 平成8年に有限会社プレマとしてスタート。有機農業できちんと経営していく体制つくりのため、平成27年に株式会社化をする。全社員で40名程度で小松菜栽培を行っている。小松菜は周年栽培(一年を通して作付)で、年間400tの「有機小松菜」出荷目標に、厳しい生産基準で安心・安全・美味しい小松菜の生産しているとのこと。圃場は、ハウス2ヘクタール、露地8ヘクタール、合計10ヘクタールで、全ての圃場は「有機JAS」の方法で生産。
露地栽培については、近隣の農地を借り、有機圃場に転換をし、有機圃場を少しずつひろげているとのことであった。実際に、有機圃場にしていくためには、長年の土づくりが必要であることが良く分かった。
2, 栽培へのこだわり
化学農薬や化学肥料は一切使わず、有機JAS認証に基づく生産管理をおこなっている。認証は毎年更新しているとのこと。有機農業にとって土づくりは最重要課題であるが、有機資材を中心に施用しているが、宇都宮大学との共同研究も行っており、土壌中の有機微生物が棲みやすい環境をつくり、土壌診断も併せて行っている。土壌診断をしているので、不足しているミネラルを必要な分だけ補充することができる。また、小松菜は周年栽培しているため、連作障害回避と地力向上のため、緑肥作物や異なる科の作物栽培を取り入れている。
防虫ネットはハウス内側や露地トンネル栽培に使用し、害虫侵入を防ぐとともに、圃場の雑草については全て手作業でおこない、品質向上に努めているとのこと。
安心・安全はもちろんのこと、特に「味(うまみ)」の向上を重視しているため、季節に合った肥培管理をおこなっている。また、野菜の中に含まれる、硝酸態窒素の数値を定期的に測定し、硝酸含有量を少なくする取り組みもおこなっている。更に、消費者へ安心してお求めいただけるために、残留放射能自主検査もおこなっている。
3、生産物を使った加工食品の取り組み
生産物は、もちろんそのまま箱詰して出荷されている。この 作業はほぼパートさんで賄えているとのことであり、てきぱきと地元のパートの方が手作業をしていた。また、生野菜とは別に地元「水沢うどん」業者とコラボした商品開発をおこなっており、「有機小松菜を使った生うどん乳酸菌入り」「有機うどん・有機そうめん」「バラ冷凍プレマの有機小松菜・有機ほうれん草」などの有機農作物を使った自然食品の開発と販売もおこなっている。
【埼玉県政への参考】
そもそもプレマの創業をした先代の「こどもには安心安全なものを食べさせたい!」との思いから始まっているとのことであったが、現在もなお当初の志を受け継いで生産、経営をおこなっていると感じた。それでも実際に手間暇をかけなければならない有機農業によって、社員、職員を守っていかなければならないわけである。ここでのポイントは農業生産物・有機農業生産物を使用した加工食品など、販路は定額価格で取引しているとのことであった。安定した販路があることと、価格を一定にすることで安定した経営をできているとのことであった。「有機」を武器に差別化した生産物や加工食品を一定量にしぼり、販路にのせるというフローは一つの参考にすべき点であろう。

写真1:プレマにて尾池生産部長より説明を受ける

写真2:箱づめ作業中のみなさま
【視察参加者】
浅野目、田並、木村、高木、水村、山本、井上、江原(8名)
【説明者】
(株)プレマ 生産部長 尾池氏
【報告担当】
江原久美子群馬県谷川岳遭難防止条例について
【視察先】
群馬県庁 産業経済部
【視察目的】
平成29年2月定例会で、「埼玉県防災航空隊の緊急運航業務に関する条例」改正案が成立した。登山は、自らの意思で山岳に登るので山岳遭難の防災ヘリコプターによる救助活動は、他の救助活動と比較して、より大きな危険を伴うため、被救助者に一定の負担を求めるなどの趣旨である。本改正により、山岳で遭難した登山者などを県の防災ヘリコプターで救助した場合、登山者などから燃料費に相当する額を手数料として徴収することが全国で初めて定められた。会派としては、有料化の前に林道整備や標識、登山届などによる無謀な登山の抑制などついての検討が必要であると考え、本視察により、遭難防止の観点から、群馬県の遭難防止条例について視察し、埼玉県の遭難予防、防止策への参考とする。
【視察内容の概要】
「群馬県谷川岳遭難防止条例」の内容、および制定過程、実際の具体的な運用、問題点などについて伺う。
【説明要点】
1、条例制定の背景
谷川岳は独特の岩場と優ぐれた景観のため毎年多くの登山者が訪れていたが、昭和41年前後の登山ブームもあり、登山者が年間10万人を超え、遭難事故の多くはマチガ沢、一の倉沢、幽の沢、および岩場地帯を登るものであった。そのため、県は昭和34年から条例制定の検討を始めた。その当時、遭難事故は増発し、昭和41年には志望者37人を数え、大きな社会問題ともなった。そのため、より効果的な遭難防止の必要性が議論され、昭和42年に「谷川岳遭難防止条例」の制定に至った。
2、条例概要
本条例のポイントとして、危険地区の指定が挙げられる。遭難死亡事故の多くが発生していた、谷川岳東面のマチガ沢、一の倉沢、幽の沢および、南面の岩場地帯を「危険地区」に指定し、登山者の守るべき事項を定めている。また、登山指導センターを設置し、危険地区における遭難防止の事務お処理などを行っている。罰則についても定められており、登山を禁止した場合に違反して入山した者、または、登山届または登山計画書を提出しないで、危険地区に登山したものは、3万円以下の罰金が課される。
3、登山指導センター
登山指導センターは、2月18日から11月30日までの毎日、朝8時30分から午後5時15分まで開所している。主な業務は、登山者に対し、遭難防止上必要とする事項を指示、危険地区の巡視及び、登山道の標識の整備、特殊条件下における登山の一般的禁止、登山届の受理と、遭難防止上必要な指示、登山計画書の受理、谷川岳周辺の気象情報の収集、センター隣接の登山休憩所の管理などを行っている。また、遭難者発生時には、関係者と協同し、遭難者救助にあたり、一般登山者には、安全登山の啓発、一般コース登山者に対する入山カードの記入及び安全登山の啓発、一般登山者の相談対応、自然環境保全の啓発などである。
【埼玉県政への参考】
平成22年埼玉県では、秩父市で山中での遭難救助活動を行っていた県防災ヘリ「あらかわⅠの墜落事故を受け、「埼玉県防災航空隊の緊急運航業務に関する条例」が制定。平成29年2月定例会の改正案では、被救助者に一定の負担を求めることが決められた。山岳で遭難した登山者などを県の防災ヘリコプターで救助した場合、登山者から救助に要した費用のうち燃料費に相当する額を手数料として徴収することが全国で初めて定められた。
会派としては、有料化の前に林道整備や標識整備、登山届などによる無謀な登山の抑制などついての検討が必要であると考え、本視察をおこなった。群馬県においては、危険地区の指定と、登山指導センターの設置により、遭難防止にかなりの役割を担っていることがわかった。登山届、登山計画書を提出しないものもいるとのことだが、届け出ることによる意識啓発も含めた効果が認めれた。また、「山のグレーディングと山岳位置図」は、無雪期や天候良好時の登山ルート別、難易度評価もあり、登山者にとってかなりの助けとなると思った。もちろん埼玉の山岳とは山岳としての危険度は異なるが、これらにより遭難防止が相乗効果を狙った施策として大変参考になると思った。群馬県については、遭難救助に対する防災ヘリの有料化は検討はしたものの、見送りをしている。

写真1:説明者の吉田様、楢原様

写真2:説明を受ける会派議員
【視察参加者】
浅野目、田並、木村、高木、水村、山本、井上、江原(8名)
【説明者】
群馬県庁 産業経済部観光物産課
課長補佐 吉田康弘様
主 任 楢原愛子様
【報告担当】
江原久美子