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視察報告

高松丸亀町商店街(商店街振興)

平成24年4月11日

高松市丸亀町商店街

視察目的

バブル経済崩壊以降、大規模店舗の進出等の影響で、寂れていく一方の中心市街地。その中で地域商店街がまとまり、土地の利用権と所有権の分離という方法で、商店街を復活させ、新しい賑わいづくりに成功した事例として高松市丸亀町商店街を視察し、埼玉県内における中心市街地活性化の参考とする。

視察内容

中心市街地活性化の取組の内容について、古川理事長さんよりお話を伺うとともに、商店街を視察。

理事長さんからの説明の要点

  • 中心市街地は、全国どこも壊滅状態。そんな中、一般の皆さんからは「商売を怠った商売人を、なぜ公費で支えるのか」と、しごくもっともなご意見を頂いた。全国の課題を色濃く抱えているのが香川県。中心市街地に居住者がいなくなってしまったのが一番の要因。
  • 月極1台5万5千円まで地価が跳ね上がり、住めなくなり、スプロール化。
  • 地区の居住者、以前は1000人。役所の持っているデータは、あてにならない。住民票では600人居住になっているが、調べてみると、わずか75人の高齢者しか住んでいなかった。
  • 丸亀町商店街は、全国で一番長い商店街のアーケード、2.7キロ(大阪で一番長いのは2.6キロ)。
  • 瀬戸大橋の建設は「この橋の開通こそ、四国全体の起爆剤」と言われたが、高松では逆。開通の年が本活動のスタート。
  • そのような中、市は、郊外へ都市拡大。94年以降、市内の売り場面積は広がっていくが、販売額は減少へ。大手スーパー(イオン:千葉資本。夢タウン:広島)は市内各地に出店競争をし、税金を払わず、税収は県外流出(イオンは、経常利益を出していない)。
    一方、消費者は大手大型店に満足。
  • バブル時、1坪1300万円が、一気に111万円、1/11に。固定資産税が大幅減。税収3割に減。
  • 香川県は全国唯一、市街化調整区域を全廃にした。市民1人あたりの行政コストは、中心部875円、郊外部5127円。
  • コンパクトシティは、郊外を切り捨てる事かと思われたが、「もう1度、農地に返そう」というもの。
  • 中心市街地活性化を、むしろ中心市街地の地権者が阻害しているのではないか。これまで責任転嫁ばかりだった。
  • まちづくりは、本気で議論すると、土地問題にぶつかる。日本経済の根本的問題は、土地問題だという学説が古くからある。
  • 商店街に、欲しい商品が並んでいない。場合によると、廃業を視野に転換させる事が仕事になった。
  • 商店街で、ありとあらゆるイベントをやったが、商店街にお金は落ちなかった。「イベントをやって、まちづくりをするのは、やめましょう。根本的な解決を」と訴えた。
    全国の再開発の失敗例を徹底的に調べた。典型的なのは、まず土地地上げ、大きな開発、キーテナント誘致。
  • 役所にマネージメントの能力はない。丸投げ。そのビルの竣工(完成)が最大の仕事。大型店への土下座外交で誘致、3~5年で撤退、公費を再投入、市の公共施設でうめる。
  • 平成2年に事業スタート、4年間で同意、12年間法律との闘い。現行法は旧態依然。政治家を一切使わず、道路上に8mの民間の橋を立てた。商店街のアーケードにベンチを設置する事でさえ大変だった。
    このまちに居住者を取り戻せるか。高齢者向けの住宅整備(1500人目標)。だが、住宅開発だけでは住まない。商店の業種再編(テナントミックス)-商業者の目線でなく、生活者の目線で。
  • 商品開発しようとしたが、一切銀行が融資しなかった。再開発事業でそれが可能に。再開発で店をやめられる時間が出来る。呉服店がスイーツの店に。靴屋がうどん屋に。
    病院ベット数、明らかに足らず、入院後3ヶ月で放り出される。これまでは大病院に一極集中で、2時間待ち、5分診療。在宅医療の新しい仕組みが必要。ベット無しの丸亀町病院開設、国立病院で後方支援。開設した病院の全てのドクターが商店街の出身者で、それまで東京に流出していた。
    町外れの特養に放り込まれるのでなく、高齢者施設の整備。
    商店街というものは、全くビジネスモデルに合わない。商店街が公共性に目覚めない限り、存在価値を失う。
    パブリックスペース。ヨーロッパのほとんどのまちは広場がある。日本で広場を整備しても、道路なので役所の規制の嵐。明石の事故以来、警察は人を集めるなと。民間投資で、自由に使える広場を建設。
    イベントのやり方を間違えて来た。自分達で企画するイベントでなく、やりたい人のイベントで、年間206本(昨年)のイベントを実現。
  • 全国でここと同じプランは出来る。しかし、それをどこでやるのか?と。
    『土地の所有権と使用権の分離』。街なか居住の促進。マンション建設、60年定期借地権、駐車場整備せず。
    駐車場代月7万円。これを生活費に使えれば、生活はすぐに豊かに。車に依存する事なく。
    障害者にとって「まちなか暮らしでやっと手に入れた“当たり前”の生活」。
  • 国は地方分権と言っている。しかしそれは、親(国)が事業に失敗し、子供達(地方)に自立しろというもの。仕送りに依存して来た子供。郊外に道路を広げても、税収は上がらない。だったらこれまで投資して来た中心市街地に投資して、これからに備えよう。砂漠に水をあげるものでなく。
  • やる気の問題でなく、本気かどうか。役所の支援でなく、商店街には、いざという時、団結する地域のコミュニティが現存していた。
    過去の再開発は、再開発法111条2/3の同意、まちから反対者を放り出す。コミュニティ崩壊。老朽化した次の一手を打てなくなる。
    再開発法110条、全員同意型。丸亀は奇跡ではない。人口減・高齢化、有史以来の大地殻変動。役所に笑われながら。
  • 廃業支援。大きな税収につながった。固定資産税が、これまで400万円だったところが3600万円、900%増。公費全て税金でお返しした。
    地権者、年8%配当。地権者にとって厳しい売り上げの下限を設定。資本と経営の分離。
    今月19日に最後の街区がオープンする。

感想

この丸亀町は行政に頼らず、あくまでも地域住民の自助の精神で再生を果たした。「丸亀町の奇跡」とよく言われるとのことであるが、そうではなく、土地の所有と利用の分離をし、商店主自身が考え方を根本から変え、消費者がほしいと思う商品を販売すれば、どこの商店街でも再生できる、との言葉が印象的だった。
また、同じ高松市内の商店街でも丸亀町のように成功しなかった商店街もある。「その商店街の再生が失敗した理由は?」との問いに、「そこではコミュニティーがすでに崩壊していた。丸亀街にはコミュニティーが残っていた。」との回答。街づくりに一番大切なのはその地域のコミュニティーだと改めて感じた。

【視察参加者】

畠山、浅野目、吉田、山川、菅、木村、中川、井上、水村、高木

【対応者】

高松市丸亀町商店街 理事長古川康造氏

香川県庁・直島(アートによるまちおこし)

平成24年4月11日、12日

香川県議会及び直島

視察目的

香川県において、2010年に実施された瀬戸内国際芸術祭の開催の経緯及び効果を調査し、芸術をきっかけにしたまちおこしについて、埼玉県内におけるまちおこしの参考とする。

視察内容

瀬戸内国際芸術2010及び2013年に向けての取り組みについて、香川県担当者より、お話を伺うとともに、直島の現地を調査・視察。
香川県庁

古沢課長補佐さんからの説明の要点

1. 開催の経緯

瀬戸内国際芸術祭の開催の経緯は、平成16年に香川県若手職員による提言があり、アートをきっかけに香川県に来てもらうことを目的に、平成20年に実行委員会を組織。
平成22年7月19日~10月31日までの105日間にわたり「瀬戸内国際芸術祭2010「アートと海を巡る百日間の冒険」を高松港周辺及び、直島など七つの島で芸術家の作品を展示するなど開催した。主催は、瀬戸内国際芸術祭実行委員会で香川県や関係自治体、商工会などによって組織された。

2. 開催結果

来場者数は、当初30万の見込みのところ93万人が来場。来場者の傾向は、女性が七割、県外からが七割、関東からは2割とのこと。作品鑑賞パスポートを発行し当初は売れなかったが、直前になって売れた。地元でもあまり知られていなかったが、四国新聞で、知られていないと大きく報道されたことをきっかけに、周知された。パブリシティの広告費換算では、8億円以上。公式ガイドブックは、9.2万部売れた。口コミで知ったという人が2割いた。

3. 事業の収支

3年間の事業で収支合計額は、7.9億円。香川県の負担金は、1.5億円。関係自治体から1億円。福武教育文化振興財団から、1億円。チケット販売額が2.2億円など。国の緊急雇用創出基金も活用した。実行委員会としては5000万円の黒字。

4. 総括

日帰りでは回りきれないイベントの為、宿泊客が多かった。香川県に来た人の4分の3が芸術祭のみの訪問だったことは次回への反省点であるとの事。島の住民は、最初来場者のマナーを心配していたが、特に県外の人のマナーが良かったとのこと。県内では西部の人の反応が良くなく、内陸部へ来場者を誘導することも大事。

5. 次回開催に向けて

次回の開催は、2013年であり、次回までの間、作品を残して見に来てもらう。次回は参加する島を増やす。予算は10億円として2010年より3億円増やした。また春、夏、秋と三回に実施時期を分けて季節を感じてもらうなどを予定している。

直島を現地調査

直島は、芸術祭の会場となる島々の中で、中心的役割を果たす島で宿泊施設もある。島には、四国本土より中学生が課外授業で訪れており、観光客も含めて活気があった。
視察団は、高松港より船に乗り直島本村港に到着。徒歩にて、「ベネッセアートサイト直島家プロジェクト」を視察。古民家を活用した趣のあるアートであった。
その後、バスに乗車し「ベネッセハウスミュージアム」を視察した。宿泊施設も併設されており、外国人観光客も多かった。
更に、バスにより移動し「地中美術館」を視察した。来場者は、地中の地形を活用した不思議な空間、作品に魅入られていた。
直島ベネッセハウス

感想

瀬戸内国際芸術祭は著名な芸術家の作品を集めたり、古民家を活用した施設、風光明美な自然環境などにより、県外、海外からも多くの来場者を集め、経済効果があり、まちおこしに繋がったと評価できる。この事は、香川県において現在2013年の次回開催に向けての取り組みが続いている事からも明らかである。
埼玉県においても、芸術だけに限らず、訪問してみようというきっかけ作りがうまくいけば、こうした形でのまちおこしが成功する可能性がある。県、関係自治体、民間団体と連携を行えば、費用対効果の高い事業でもある。

【視察参加者】

畠山、浅野目、吉田、山川、菅、木村、中川、井上、水村、高木

【対応者】

香川県観光交流局にぎわい創出課 課長補佐 古沢保典 氏
香川県議会事務局政務調査課 課長 徳永渡 氏

高知県馬路村

平成24年4月11日、12日

高知県安芸郡馬路村

視察内容

  • 馬路村が全国ブランドに成長するまでの「村おこし」の取り組みについて
  • 全国ブランドである柚子をはじめとする商品の製造工程・ショップ見学
  • 広報戦略について

行程

11日(水)
15:00~16:00
馬路村の「村おこし」の取り組みについて説明を受ける(役場にて村長より)

役場で村長より説明を受ける
役場で村長より説明を受ける
熱心に説明をする上治村長
熱心に説明をする上治村長

16:00~17:00
工場見学(地元高知新聞の取材あり)


ガラス向こうの包装作業・丁寧な作業が印象的

手作り感あふれる広報 広報戦略に力を入れていることが伺える

17:30~
地元の食文化・継続的な観光客の誘致の取り組みなど、宿泊客として体験(村営宿 馬路温泉にて)
馬路村の村おこし弁当
・馬路村の村おこし弁当
東京のデパートを会場に行われた駅弁大会にて売上が思うように伸びなかったことから、逆に応援の声が高まる効果も!

12日(木)
9:30~10:15
ショップ見学

ショップ店内1 ショップ店内2
ショップに並ぶ数々の商品は、全国ブランドとなった「ゆず」を使った生活感あふれるものと、地元の木材を使用した高級感あふれる商品にわかれ、消費者のターゲットの明確化をはかっていることが伺える。

【視察参加者】

畠山、浅野目、井上、木村、菅、高木、中川、水村、山川

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